【研修講座1】
日本語話者における 特異的言語障害と発達性ディスレクシア
-失語症や失読失書との共通点と相違点-
7月13日(土)16時~18時
「日本語話者における 特異的言語障害と発達性ディスレクシア -失語症や失読失書との共通点と相違点-」
講師:宇野 彰先生(筑波大学)
対象:卒業生・修了生、実習指導者、その他臨床に携わる方
申込方法
下記(1)~(4)を明記の上、メールでお申し込みください。1週間以内に返信メールを送ります。
※届かない場合は必ず電話でお問合せをお願いします。
(1)希望講座名(宇野先生の講座は第1回研修講座と記載)
(2)氏名
(3)ご所属
(4)ご連絡先(電話番号とメールアドレス)
ご連絡先は、急な連絡が生じた場合に利用させていただきます。
申込先 st-senkouka@ohsu.ac.jp
お問合せ 大阪保健医療大学 言語聴覚専攻科 ℡:06-6354-0091
【講演要旨】
特異的言語障害は、自閉スペクトル症が認められない状態で、知能は正常でも言語発達だけが障害されている言語障害です。
まるで失語症のようなのです。しかし、後天的な大脳損傷も認めませんし、一旦獲得された言語様式すべてが障害されているわけでもないのです。
英語圏では、動詞や名詞の語尾変化の障害に代表される形態論的な障害であるgSLI(grammatical SLI)が有名ですが、日本語話者ではgSLIに対応する障害例の報告は限られています。
日本語話者で高頻度にみられるSLIのある児童の症状、大脳機能障害部位などについて解説します。
きっと失語症のあるタイプとの類似性に気付かれることでしょう。
一方、発達性ディスレクシアは、知能は正常であったとしても読み書きだけが障害されている発達期に明らかになる障害です。
しかし、大脳損傷は認められません。
この障害は後天性大脳損傷に起因する失読や失書と類似しています。
私たちも使っているVBM(Voxel Based Morphology)という手法を用いての大脳構造の特徴や、PETや機能的MRIおよびSPECTを用いた大脳機能低下部位について失読失書例と比較して解説します。
発達性ディスレクシアは世界の障害種の中でもっとも出現頻度の高い障害です。
英語圏では「読み」の障害に関して10%以上の頻度であるという報告が複数あります。
一方、イタリアやエジプトでは1%という報告もあります。
日本語の「読み」では、ひらがなで0.2%、カタカナでは1.4%、漢字で6.9%でした(Uno et al.2009)。
この出現頻度の違いについては文字言語の構造の違いによって説明することが可能です。
文字列から音韻列への変換の規則性と文字に対応する音韻の粒性、そして表語文字である漢字の特性などから説明します。
新学習指導要領では小学校で英語が科目になります。
英語の読み書きが困難な児童が10%はいるのではないかと想定でき危惧するところです。
ほか、認知能力別にみた下位分類、完璧にひらがなやカタカナを習得できるトレーニング方法(宇野ら、2015)および必要な3条件などについてもお話しします。
宇野 彰